コラム : エボナイトは何からできているか知っていますか

こんにちは!
今日はエボナイトについて、ミニ知識になるようなことをお話ししたいと思います。
もし、ホットケーキの材料だったら、子どもだって絵本から、小麦粉、ふくらし粉、牛乳、卵でできることは知っていると思いますが、エボナイトはなにでできているわかりますか?


エボナイトとは、天然ゴム・硫黄・エボナイト粉末の三つでできています。

天然ゴム硫黄エボ粉

この3つを混ぜてつくっているんです。ホットケーキみたいにミックスがあったら便利だけど、そういうわけには行かないので、なかなか大変なんですよね。

ロール

厳選した良質の天然ゴムを大型のミキシングロールで練りながら、2種の粉を加えていきます。


これを、板状または棒状にして、蒸気窯に入れて、数日間蒸しあげ、「加硫」させます。これによって、ゴムの分子と硫黄の分子が結合して、超硬質ゴム「エボナイト」が出来上がります。


窯

加熱時の温度管理は、熟練の職人技を要します。職人は、エボナイトの形状や大きさによって、蒸気の圧力や、排気の間隔を見て加熱温度を調整してようやく出来上がります。


以上が黒のエボナイトの作り方のお話でした。 さらにマーブルエボナイトとなるともう一歩難しくなります。

 

エボナイトとは、天然ゴム・硫黄・エボナイト粉末の三つでできています。


コラム : マーブルエボナイトの作り方

我が社がマーブルエボナイトを作ろうと決めたきっかけは、工場の倉庫の奥からふと現れた、年代不詳製造元不詳のカラーエボナイトの成型品。「過去に誰かが出来たことはきっと我が社でも出来るはず!作って見せる!!」と、現会長と現社長に強い思いが芽生えたのです。2008年頃、リーマンショックで日興エボナイト製造所の仕事が激減した頃の話です。


ただ、ノウハウがないので、一から作り出すのは大変でした。 原料を販売する業者や、ゴム業界の知り合いへヒント探しに行き、本来教えてくれないような企業秘密に当たる情報を提供してもらうなどして、2年ほど試行錯誤が続きました。


会長の絵

「色だけでは面白くない。黒エボナイトと混ぜたら…」と、絵画の心得がある会長が、墨流しのような文様が現れる独自のマーブルエボナイトを開発しました。それは、それまで会社で製造してきた工業製品とはまったく異なる、芸術的な製品を予感させました。製造に手間も時間もかかりますが、色彩感覚が優れている会長は、次から次へと新色を開発していきました。(この絵は、さらさらと短時間で描き上げた会長の絵です。)


顔料を練り込んだゴムを使うのですが、加硫前の顔料の色は、加熱で色も変わります。また、エボナイトそのものの褐色も影響するので、予想しながら作ります。

 

企業秘密なので、あまり細かく言うことはできないのですが、ベージュ色の神龍(しんりょう)が他の色を作り出す上で土台となる、大事な色になっています。 

今では、黒エボナイトの他に、丹心・日暮・江月・若葉・薫風・深海・神龍の7色のマーブルエボナイトが現行品としてあり、それに加えて、イベントの際には限定の特別色を出しています。お客様が、このカラフルな軸をお楽しみいただけていると幸いです。


日興エボナイト製造所製リップル柄マーブルエボナイト

マーブルエボナイトは、写真のような柄のものが一般販売用として製造されていて、多くの国へ輸出されています。

コラム : エボナイトの原材料の仕入れ先が変わった!!

さて、上記の3素材のうち、エボナイト粉末(以下エボ粉)についてのお話です。

エボ粉

これまで我が社が使っていたのは、中国製だったのですが、2017年、環境規制上、中国で製造することができなくなってしまったと伝えられました。エボ粉はエボナイトを作る上で不可欠ですから、我が社の根底が揺さぶられる大問題です。


そこで社長の一大決心!「ならばエボ粉を自社で作ってしまおう!」


とはいえ、粉砕についてはド素人。粉砕機メーカーをいくつも訪れ、それぞれ試作を何度も重ね、品質、生産量、価格の折り合いを見出しました。

その品質判断に一役買ったのが、我が社の万年筆チームです。試作のエボ粉を利用した エボナイトを、チームがすぐに切削加工・研磨。社長も自信をもって判断することができました。

こうして、粉砕機の導入にようやく辿り着きました。


現在、タイから輸入した原料の板状のエボナイトを社内で粉砕し、エボ粉を生産しています。自社で使いきれない分は、エボ粉を必要とする他業種の企業に販売することもできます。ピンチをチャンスに変え、難を逃れたのでした。